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慣性系と非慣性系から見た運動の解釈

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慣性系と非慣性系の違いでは、見える景色が異なると存在する世界も違うというお話をしました。

ここでは、電車の中につり革がぶら下がっているとし、そのつり革にはたらく力の解釈について考えてみたいと思います。

つり革の動きと見え方

簡単のため、電車内にはつり革が1本だけぶら下がっているとします。

ほとんどの方が経験あるかと思いますが、例えば電車が右向きに加速すると、つり革はその真逆の向きに傾きます。

ここで、電車の外にいるAさんと、電車の中にいるBさんがそれぞれつり革を見ている場合を想定してみましょう。

説明のため、つり革の持ち手部分を「つり革本体」とします。

大切なのは、つり革本体にはたらく力の解釈はAさんとBさんとで違うということです。

Aさんが見る場合

電車が力(駆動力)によって右に加速すると、つり革の根元部分も同じ力を右向きに受けます。

しかし、つり革本体は直接右向きの力を受けていないので、「慣性の法則」により、その場にとどまろうとします。

Aさんはこの状態を静止した地上から見ているので、つり革本体が逆向きに引っ張られつつ、右向きに動いているように見えます。

Bさんが見る場合

Bさんは電車とともに同じ方向へ加速しています。

もっと言うと、Bさんの世界ではつり革本体を除いた全ての部分が右向きに力を受け、右向きに加速しています。

このため、Bさんには唯一つり革本体だけが進行方向と真逆に力を受け、その方向に引っ張られているように見えます。

この真逆に受ける見かけの力を、慣性力といいます。

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慣性系と非慣性系の違いでも紹介したとおり、この場合のAさんがいる世界は「慣性系」、Bさんがいる世界は「非慣性系」です。

そして慣性系とは、運動の第1法則(慣性の法則)と第2法則が成り立つ座標系のことでした。

これらを踏まえてまとめると、下記のようになります。

●Aさん(慣性系)

つり革本体は、電車とともに右向きに加速しているように見える。
つり革本体が進行方向と逆向きに傾くのは、慣性の法則によるものと解釈する。

●Bさん(非慣性系)

つり革本体が進行方向と逆向きに傾くように見える。
これは、つり革本体にあたかも進行方向と逆向きの力(「慣性力」)がはたらいているためと解釈する。

ご承知の通り、電車の中のつり革の振る舞いは、ただひとつだけです。

しかし、たったひとつの運動の状態も、見る側の世界(慣性系か非慣性系か)によって、解釈が違うということを覚えておいて下さい。

式が表す意味も違う

今度は、つり革の運動に関する式を、Aさんから見た場合とBさんから見た場合とでそれぞれ立ててみましょう。

電車の外から見る場合(Aさん)

前述したように、Aさんから見たつり革本体は、右向きに加速しています。

この時、つり革本体には、重力と糸の張力がはたらいており、この二つの力の合力\(\vec{F}\)が、電車の進行方向と同じ向きになります。

つまりAさんは、つり革本体は右向きにはたらく力\(\vec{F}\)によって加速していると解釈するわけです。

電車の中から見る場合(Bさん)

Bさんはつり革本体だけが、電車の進行方向と真逆にはたらく力(慣性力)によって、引っ張られているように見えます。

ここで電車の加速度を\(\vec{a}\)とすると、つり革本体の加速度は\(-\vec{a}\)です。

したがって、つり革本体にはたらく力を図示すると下のようになります。

Bさんは、つり革本体は力のつり合いにより後方で静止していると解釈するわけです。







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