コーヒーカップ、スマートフォン、リュックサック、・・・。
私たちの身のまわりにある物は、そのほとんどに「大きさ」があります。
このような大きさがある物は、力を加えた時にどんな動き方をするでしょうか?
例えば、この数年でとても身近になったスマートフォン。
つるつるのテーブルなどの上に置いて、真ん中辺りを指でゆっくり押せば割と真っ直ぐ進みますが、
端を押せば、くるっと回転する向きに動くと思います。
実はここが、高校物理で登場する「剛体」と「質量」を考える際にとても大切なポイントになってきます。
質量と大きさをもつ「剛体」
前述したスマートフォンは、大きさもありますし、質量(重さ)もあります。
このように、大きさと質量をもった物体を「剛体(ごうたい)」といいます。
冒頭でスマートフォンの例を挙げましたが、剛体は、下記のような運動をする特徴があります。
●並進運動
●回転運動
並進運動とは、物体のすべての点が平行移動する運動です。
名前こそ馴染みがないものの、これまで扱ってきた物体の移動は、ほとんどがこの並進運動です。
回転運動は、定義としては「動かない点を中心とする同心球面上を同じ角速度で移動する運動」ですが、要するに、ある点を中心としてくるくる回転する運動です。
質量しかもたない「質点」
一方で、大きさが無く、質量のみをもっている物体を「質点(しつてん)」といいます。
大きさが無いので、質点の運動は並進運動のみです。
なお正確には、質量のみをもっていると「みなした」物体です。
質点は、その物体の大きさを考えなくても良い場合に使う仮想的な概念なので、現実世界にはありません。
例えば、太陽系のひとつである地球は、私たちから見るととても大きいですが、地球がまわっている軌道全体の大きさと比べると、とても小さいですよね。
なのでこの場合は、大きさがある地球を「大きさが無い質点」とみなし、質点の運動として解析します。
とても広い公転周期の中で、米粒のような地球が自ら回転していたとしても、さほど影響は無いからです。
物体を質点とみなすことで、回転という複雑な動きを考えなくてよいため、計算がとても楽になるというメリットがあります。
物体が質点とみなせるわけ
これまで物理の問題を解くうえで、「ニュートンの運動方程式」を何気なく使ってきたかと思います。
この運動方程式において出てくる量は、加えた力(\(F\))、質量(\(m\))、加速度(\(a\))のみなので、物体に質量さえあれば、その運動は運動方程式によって紐解くことができます。
つまり、明確な記述が無かっただけで、これまで運動方程式を使う問題に登場してきた物体は「質点」だったわけです。
問題によっては「大きさの無視できる物体」などと文中に書かれていたかもしれません。
逆に、問題に登場する物体が「剛体」である場合は、文中には「固くて一様な」「細くて軽い棒」などと記載があります。
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質点と剛体とでは力のつり合いの条件も異なりますので、まずは両者の違いを把握してもらえればと思います。