高校物理では、「質量」という言葉がとてもよく出てきます。
一方、日常生活では、質量よりも「重さ」という言葉をよく使ってきたのではないでしょうか。
これらは似ているようで全くの別物で、よく混同されやすいものです。
高校の範囲というわけではありませんが、「質量」と「重さ」の違いについて、今一度おさらいをしておきましょう。
質量について
質量とは、物体そのものがもっている量で、単位は[kg]、[g]などを使います。
物体そのものの量なので、場所によって変わることはありません。
例えば地上で質量60[kg]の人がいたとすると、その人が宇宙空間に行っても、質量は60[kg]のままです。
重さについて
一方、重さとは、物体にはたらく重力の大きさのことで、単位は[N]です。
よく物理の問題で、物体にはたらく重力を\(mg\)と表しますが、これがまさに「重さ」です。
\(m\)は物理の質量、\(g\)は重力加速度なので、重さは質量に重力加速度をかけたものと言えます。
重さは質量と違い、場所によって変化します。
例えば、地上で重さ98[N]の人がいたとすると、その人が宇宙空間に行った場合、重力加速度の影響を受けないので、重さは軽くなります。
重力加速度を9.8\([m/s^2]\)として(重さ)=(質量)×(重力加速度)の式に代入してみると、
\(98\)=(質量)×\(9.8\)
(質量)=\(\Large\frac{98}{9.8}\)=\(10[kg]\)
宇宙空間ではこれだけの重さ、というか無重力である宇宙空間では、重さという概念がありません。
このため、物体そのものの量である「質量」しか残らず、
地上で重さ98[N]の人の質量は10[kg]
ということになります。
体重がkgなのはなぜ?
「地球上にいると重力がはたらくから、体の重さが質量の単位(kg)なのはおかしい」と思うかもしれません。
しかしそもそも体重とは、「動物の固体の質量」のことです。
つまり、体重計は質量を計っているので、単位はkgであっています。
私たちが体重計に乗ると、確かに「重さ」が体重計にかかりますが、体重計はその重さを質量に換算して表示させているだけなのです。
ばねばかりと上皿天秤
理科の実験でも使った「ばねばかり」と「上皿天秤」も、質量や重さを考える上で役に立ちます。
ばねばかりは、物体をばねの下に吊り下げて重さを計るので、まさに重力に影響されます。
このため、同じ物体を地上で計るのと宇宙空間で計るのとでは、数値が違ってきます。
また、上皿天秤はかねてより物体の質量を計る目的で使われており、片方の皿に計りたい物体を、もう片方の皿におもり(分銅)を乗せます。
そして、ちょうどつり合いが取れた時に乗せていたおもりの合計が、その物体の質量です。
なお、地上で計る場合は、左右の皿それぞれに乗せた物に重力加速度が生じていますが、宇宙空間ではどちらも生じていません。
つまり、重力加速度が生じるか生じないかは左右の皿で同じなので、地上で60キロのおもりとつり合った人は、宇宙空間でも60キロのおもりとつり合うのです。