速度\(\overrightarrow{V_0}\)で進んでいる質量\(M\)のロケットに、質量\(m\)の燃料が速度\(\overrightarrow{v}\)で衝突し、そのまま一体となって進んだ。
一体となった後のロケットの速度\(\overrightarrow{V}\)を求めよ。
現実に起こる頻度は少ないですが、ロケットの一部が分裂する問題の逆パターンになります。
分裂する場合と同様、ロケットと燃料は、衝突する瞬間に互いに及ぼし合う力のみを受けるので、衝突前と衝突後とで運動量は一定です。
同じ要領で、運動量保存則の式を立ててみましょう。
<衝突前>
ロケットと燃料は、まだ別々に進んでいます。
よって、ロケットと燃料の質量はそれぞれ\(M\)、\(m\)、ロケットと燃料の速度はそれぞれ\(\overrightarrow{V_0}\)、\(\overrightarrow{v}\)です。
<衝突後>
衝突後は一体となっているので、質量は\(M\)+\(m\)、速度は問題文のまま\(\overrightarrow{V}\)です。
(ちなみに燃料の速度も、一体となっているので\(\overrightarrow{V}\)です。)
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よって、運動量保存則の式は、
\(M\)\(\overrightarrow{V_0}\)+\(m\)\(\overrightarrow{v}\)=(\(M+m\))\(\overrightarrow{V}\)
となり、この式から衝突後のロケットの速度は、
\(\overrightarrow{V}\)=\(\Large\frac{M\overrightarrow{V_0}+m\overrightarrow{v}}{M+m}\)・・・・・①
と求めることができます。
速さを代入する時は符号に注意
最後に、求めた式に具体的な値を入れてみますが、特に速さが与えられた時は注意が必要です。
なぜなら、速さは速度と違って向きをもっていないので、場合によってはそのまま代入できないからです。
例として、次の二通りの衝突を考えてみます。
●燃料がロケットに追い付く形での衝突
●燃料とロケットが互いに向かい合った衝突
速さ50[m/s]で進んでいた質量2000[kg]のロケットに、質量1000[kg]の燃料が速さ70[m/s]で衝突した。
ロケットと燃料の進む向きは、どちらも右向きですね。
なので右向きを正とすると、速度もロケットと燃料それぞれ50[m/s]、70[m/s]となるので、値はそのまま代入できます。
\(\overrightarrow{V_0}\)=50、\(M\)=2000、\(\overrightarrow{v}\)=70、\(m\)=1000を①式に代入して、
\(\overrightarrow{V}\)=\(\Large\frac{2000×50+1000×70
}{2000+1000}\)=\(\Large\frac{170000}{3000}\)
≒\(56.7[m/s]\)
衝突後は、右向きにおよそ56.7[m/s]の速さで進むことがわかります。
速さ50[m/s]で進んでいた質量2000[kg]のロケットと、速さ70[m/s]で進んでいた質量1000[kg]の燃料が互いに向かい合って衝突した。
この場合、ロケットと燃料の進む向きは、互いに逆向きですね。
なので右向きを正とすると、燃料は正の向きですが、ロケットは負の向きに進んでいることになります。
よって、燃料の速度は70[m/s]、ロケットの速度は-50[m/s]となります。
速度は速さと違って向きをもっており、正と決めた向きと逆向きに進んでいれば、マイナスがつくからです。
ゆえに、\(\overrightarrow{V_0}\)=-50、\(M\)=2000、\(\overrightarrow{v}\)=70、\(m\)=1000を①式に代入して、
\(\overrightarrow{V}\)=\(\Large\frac{2000×(-50)+1000×70
}{2000+1000}\)=\(\Large\frac{{-30000}}{3000}\)
≒\({-10}[m/s]\)
衝突後は、左向きに10[m/s]の速さで進むことがわかります。
(速度で表すと、「-10[m/s]で進む」となります。)
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念押しになりますが、
「大きさをもっているもの」が速さです。
「大きさと向きをもっているもの」が速度です。
(速さと速度の違い)
元々向きをもっている速度は、プラスやマイナスをつけるだけで向きを表すことができますが、速さはそれができません。(「マイナスの速さ」というのはありません。)
なので、速度の式に速さを代入する時は、運動の向きによって符号が変わることに注意してください。