物理学における「エネルギー」とは、物体などが持っている仕事をする能力の総称を指します。
ここでいう仕事とは、物体に加わる力と物体の移動距離(変位)との積のことです(物理における「仕事」の意味とは?でも紹介しています)。
普段の生活の中では、「エネルギー」という言葉を気力・活力的な意味で使うことが多いかと思いますが、このように物理の世界では、意味が全く違ってくるのです。
これを踏まえたうえで、今回は「エネルギー保存則」と「力学的エネルギー保存則」の違いについて見ていきましょう。
エネルギー保存則
まず例として、電気を発生させる「発電」を挙げてみます。
電気を発生させるとは、つまりは電気エネルギーを得るということです。
日本には発電の方法がいくつかあり、その分電気エネルギーを得るために使うエネルギーも、下記のようにいくつもあります。
<火力発電>
石炭や石油を燃やした時の「熱エネルギー」
<水力発電>
水が高い場所から低い場所に落ちた際の「水の位置エネルギー」
<原子力発電>
核分裂による「熱エネルギー(核エネルギー)」
<太陽光発電>
太陽の光による「光エネルギー」
代表的なものを挙げましたが、どの方法においてもそれぞれのエネルギーを「変換して」、電気エネルギーを得ています。
そして「エネルギー保存則」とは、変換する前と後とで、エネルギーの総量は変わらないという法則です。
エネルギーを変換する過程において、変換前と変換後で総量は変わらない
例えば火力発電では、石炭などを燃やした熱エネルギーを電気エネルギーに変えますが、形は変われど、エネルギーのトータルの量は変わっていません。
熱エネルギーが消えて無くなったように思いがちですが、必ず何かしらのエネルギー(この場合電気エネルギー)に変換されたということです。
力学的エネルギー保存則
「保存力」と「力学的エネルギー保存則」でも紹介していますが、力学的エネルギー保存則とは、次のようなものでした。
物体に保存力のみがはたらいている場合、その物体の力学的エネルギーは一定である。
力学的エネルギーとは、物体の位置エネルギーと運動エネルギーを足したものです。
ある条件の元では力学的エネルギーは一定、つまり総量は変わらないよ、という法則です。
最初に紹介したエネルギー保存則とかなり似ていますよね。
実は力学的エネルギー保存則は、エネルギー保存則の一部なのです。
エネルギー保存則の中でも、特に力学に関係したものが、力学的エネルギー保存則です。
なのでこの二つは、大きな違いは無いと言っても良いでしょう。
現に、力学の解答で「力学的エネルギー保存則より」と記述している参考書もあれば、「エネルギー保存則より」と記述している参考書もあります。
ただ先述したように、世の中には様々な形のエネルギーが存在するので、エネルギー保存則とは、それら全体に関係する法則だとイメージしておいてもらえればと思います。